人の見た目と中身なんてのは、全くもって一致しない…。
机へうつ伏せになっていたヒートは身体を反転し、椅子の上でバランスを取りながら天井を見て溜息をついた。
折角の休日の筈が、図書館で読書三昧だ。しかもその本の内容は自分の趣味で選んだ訳ではないときている。
“典型的化学農薬依存型大規模農業の限界”は、ヒートが何の気もなく受けてみた講義の参考資料だ。化学農薬の代替として微生物や虫の使用を促進するという内容で、著者は教授自身。れっきとしたMD/Ph.Dで生物農業の権威らしいのだが、どうも強烈な思想に偏りすぎていて読みづらい。目的の結論に達するまでの主張が長く、どこをどう捉えて書評を書けば良いのか途方にくれてしまった。
ヒートは屋外へ出た。ぬるい雨に打たれるのが嫌で、半壊した建造物の屋根の下へとサーフを引き摺った。どんよりと曇った空は、今のサーフの左目とそっくりだ。
「どこへ行く」
「どこも行かねえよ!」
「用がないなら、戻る」
「あるから連れて来たに決まってんだろ…」
背後で何かが弾ける音がした。
振り向こう、そう思った刹那、喉の奥、鼻の奥、耳の奥まで、体内から熱い水が溢れ出して来た。
苦しい。息が詰まってしまう。
サーフの目、いや、既にサーフではないかもしれないぎらぎらとした目が、自分の顔を睨んでいる。