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May waters be light upon you


Filed under: texts(R-18) — gnax @ 9th November, 2005 17:53 Comments Off

「これは水じゃないよなー」
最初にそう言い出したのは、シエロだった。
「水は水だろ。でなきゃ、何だってんだ?」
俺が聞くと、シエロは水路に指を突っ込んで、嗅いだ。
「ホントの水は無味無臭、じゃなかったっけ?」
「お前の言うホントってのは何なんだ?」

「いいから、ヒートもやってみろよ」
仕方ないので、片手を流れに浸した。冷たくもなく、熱くもない。ぬるりとした感触のそれは独特の匂いを放っている。
手にすくうと、細かく白いフワフワとしたものが浮いている。一口啜ると、塩辛いような苦いような…あの生臭いいつもの味が口一杯に広がった。
「わーっ、飲むなよ!毒かも知れないだろ…」
「雨の味と変わらねえ」
「ってコトは、雨もホントの雨じゃないんだ?」
「違うって、何なんだよ。シエロは一体何と何を比べてんだ」
「”ミズ”は、もっと透明だし、匂いなんてしない。そうだろ?」
「言ってる意味がわかんねえ…。その透明のミズとやらはどこにあるんだ」
「それが判ってたら、ヒートに聞かないって」
「…俺が知るはずねえだろ!」
「怒るなよー。意見聞きたかったのに」
「別に怒ってるわけじゃねえ!…ああ、もしかして、”ウミ”ってやつか?お前が言いたいのは」
「ウミ。海かー。船が浮かんでるんだよなっ。…けど、海はしょっぱいんだよな?」
「知るか」
「この水も結構しょっぱい匂いだけど、なんか違う気がすんだよなー…。アルジラも知らないって言うしさ。あーそうだ!ゲイル、ちょっとこっち来てみ?」

シエロに付き合っていると、折角の休憩時間が会話で潰されそうだ。
俺はその場を離れた。

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扉を一つ隔てた通路に、ごろりと横になる。水音にかき消されて、ここなら人の声も届かない。目を閉じるとぬるい空気が水面を漂っているのが判った。
妙に眠い…。睡魔に引きずり込まれる…。

俺は目を閉じた。
屋内は落ち着いていい…。

ああ…身体がふわふわと浮いて、どこかへ流れていきそうだ…。

ばしゃん、と水の跳ねる音がした。
敵だろうか。
瞼が重い…。

やっとのことで目を開けると、ゆらゆらと歪む天井が見えた。
俺の身体はどんどん沈んで、天井が遠くなる…。

小さな泡が上へ上へと浮かんでゆく。

ごぼっ、とひときわ大きな泡が、深く俺の肺から押し出されて…遠い水面を目指す…。

******************************

「おい!聞こえるか!」
気がつくと、俺の顔は水面に浮かび、身体はサーフ…いや、ヴァルナにがっちりとホールドされていた。視界に雲がかかって、何もかもがボケて見える…。
「あれほど狭い通路で寝るなと…!」
うるせえなあ…
「眠い…俺は寝る…」
俺はあたたかい水の中に戻ろうとした。その方が眠れそうな気がしたからだ。
「やめろ!死ぬ気か!」
ヴァルナのデカい手の平が、俺の横っ面を殴る。
「っぐ!!っがぁっ!」
咳き込むと、鼻と口から水が溢れてきた。
「寝惚けて水路に転落なんてロクな死に方じゃない」
ヴァルナは俺を引っ掴んで、通路まで持ち上げた。空気が重くて息苦しい。
「違う…呼ばれたから行っただけだ」
「誰に」
「知るか。てめーのせいで俺の睡眠時間が台無しだ」
「ヒート。お前は溺死するところだったんだ。水の底で寝る習慣でもあるのか」
「水…?」
そう言われれば、確かに俺は通路で寝ていた筈だった。
「何で俺…濡れてんだ」
「お前は水路に沈んでたんだ。何かに操られているのかと思った」
ヴァルナは俺のマントを取って、ぎゅっと絞った。濁った水がだらだらと落ちる。
「俺は俺だ!操られてなんかいない!」
「そんな事は判っている。ヒート…呼ばれたと言ったな。寝る前に何かしたか」
「何もしてねえよ。水は飲んだが」
「ここの水か」
「ああ。何か悪いか?」
ヴァルナがさっさとプロテクターを剥いでしまったので、水を吸ってグダグダになったアンダーも脱いで、水路の上で絞る。敵が出てきたら丸腰もいいところだが、ヴァルナがどうにかしてくれるだろう。
「お前は何故そう無防備なんだ。ここまで水路を歩いてきて、何も思わなかったのか?」
溜息をつきながら、ヴァルナが布切れを投げて寄越す。身体を拭けと言う事らしい。
「何だって?」
「送水機から上がった後、皮膚に違和感を感じなかったのか?」
「いちいち覚えてるかよ」
「じゃあ、死体だ。通路にあった人間の死体。通行に邪魔なものは全て水路に投げ込んだだろう。それは覚えているか?」
「死体がどうかしたのか」
「水路には浅い箇所も多い。あれだけ重い死体を沈めたら、簡単には流れて行かない筈だ。…それなのに、どの道を通っても、戻っても…死体は見当たらない。意味が判るか?」
「いや」
「あいつらは、時間をかけて溶けているんだ。この水に」
ヴァルナは水路を指差した。どことなく赤白く、澱んでいる水…。
「有機物を含んだ水だとゲイルは言ってた。よく判らないけれど、色々な物が溶けて混ざっているんだろう」
「ま、待てよ。溶けるって、人がか?」
「そうに決まっている。だから俺はこの身体に変身してヒートを助けに来た。助ける側までダメージを受ける訳にはいかないからな」
俺は慌てて自分の手の平を見て…声を失った。
皮膚全体が妙に赤く見える。だが、表面の皮一枚は白っぽい。指と指を擦り合わせると、皮膚がヌルヌルする膜に包まれているように感じる。
「これ、は…」
「長い間浸かっていたから、体皮が溶け始めていたんだろう。危ないところだった」
「あの水…毒には思えねえのに…」
「ヒートは呼ばれただけだ」
「呼ばれた?」
「さっき自分で言っただろう。ヒートはここの水を飲んだ。だから水に呼ばれたんだ」
「ありえねえよ!」
「そう思うか?…なら、その足を引っ込めろ!」
「っ…!?」
いつの間にか、俺は身を乗り出して、水路に足を浸していた。
「死者の水を飲んだから死者に呼ばれる。そう言う事だろう」
「じゃ、じゃあ俺…身体の中から溶けるんじゃねえのか…?」
「今のお前の身体は肉そのものだな」
ヴァルナは俺の話を聞いていないのか、噛み合わない事を口にした。俺の身体をまじまじと見ている。
「俺の疑問に答えろよ!」
「血管が浮き出ていて紅い。こういうのを何ていうんだ?”キレイ”…か?筋繊維の一つ一つが判るようだ」
「キンセンイ?!」
「いや、違うな…”旨そう”だな」
言うなり、ヴァルナは俺の肩を掴んだ。
「痛ぇっ!!」
「痛いだろうな、皮膚が弱くなっているから。…柔らかくて、赤子の肌のようだ」
硬い唇で首筋を吸われて、長い舌で嘗め回される。
皮膚が敏感になっているからか…舐められた場所がじんじん痺れてくる。
「いやだ…!…な、なあ、俺の身体どうなってるんだよ!」
「心配か?」
「…溶けてるんだろ?…手も…顔も…」
「考えなくてもいい。ヒートはヒートのままだ」
「サーフ!」
「安心しろ。死人の体液を飲んだんだろう。それなら、逆の事をすればいい」
俺は思わずヴァルナの顔を見た。俺だって人の事は言えないが…こういう時に、目がないのは気味が悪い。さっきから視界が悪いのも相まって、何を考えているのか判らなくなる…。
目の前の悪魔は俺を布切れの上に押し倒し、舌に唾液を乗せて俺の顔を舐めた。
「うっぷ…!あ、あにすんだっ…!」
「皮膚に残っている水を中和している」
ヴァルナの舌が眼球の上を滑る。
「い…ッ!」
背筋がぞくぞくする。圧迫感が気持ちいい…。
「目を傷めたら厄介だからな。見えるか?」
「ッあ?…だ、大分いい…ぜ」
舌が離れると、ボケていた視界が元に戻った。水を舐め取ってくれたらしい。
「今、敵が来ればいいんだが」
ふとヴァルナは素っ頓狂な事を呟いた。
「いっ…今か…?」
「切り裂いて生き血をお前に浴びせてやれば、一気に中和できる」
「別にお前のでいいけどな…」
俺がそう言うと、表情の読めない顔が和らいだように見えた。
「なら、余す所なく舐め取ってみよう」
腕が掴まれて、ヴァルナの口へと運ばれる。デカい口は俺の手首まで簡単に咥え込んでしまった。牙を立てないようにしながら舐められているのが判る。熱い喉肉が指に絡みつく…。
「喰うなよ?」
「喰いたい」
ヴァルナは口から俺の手を放し、今度は胸や腹を舐める。
何を考えてるんだか、ヤツは俺の臍に舌を突っ込んだ。腹をエグられているみたいでムズムズする。
「そ、そこはいや…だっ…!」
俺が震えると、寒いのか?と聞いてきた。相変わらず的外れなヤツだ。
「身体が濡れて冷えたか」
「ちげーよ!」
否定したのに、ヴァルナは俺をすっぽり抱き締めた。
「これでどうだ?」
「っかやろ…!お前の身体…かてーしつめてーし…。舐めてた方がよっぽどあったけえよ」
「そうか」
くるりと身体が引っ繰り返され、背中から足まで舌が這った。
「っひゃ…!も、もう少し力抜けよぉ…ザラザラしてて…きもちわるい」
「気持ちいいの間違いだろう」
「な、何言ってやが…っひあっ?!」
舌が脇の下に突っ込まれたので、俺は布切れを掴んで叫んだ。
「いや…だ…っ…んなトコ…っ!」
「いいんだろう?」
ヴァルナは俺の腰を掴んで四つん這いにさせる。
「さて。で、次はどこを舐めればいいんだ?」
「っのやろ…っ。わ、判ってんだろ…!」
「ヒートの大事な部分を溶かす訳にはいかないから、今回は素直に判っていると言おう」
カタくなってる俺自身に舌が絡みつく。ぬちゃぬちゃ音がして、先走りも全部舐め取られる。薄くなった皮膚には、ザラつく舌の感触がキツい。
「サーフ!も、いいから…ッ!」
「ああ、早く俺のものを飲ませてやらないと」
舌が離れたかと思ったら、俺のナカにこじ開けて入ってきた。太くて尖った舌は、普段のサーフのブツと変わらないサイズだ。
「そ…、ソコにまで水は入ってねえよ…ぉ…」
「判らないぞ。最近よく使っているから、多少は緩くなっているかもしれない」
「ば…か…ぁ…っも、出…」
「出したいなら出せ。身体の毒も出て行く」
べちょべちょ舌を抜き差しされて、目の前が白くなる。
「ッ…あ…いや、だっ…!…ッア…!!」
「随分出たな。少しは調子も良くなっただろう」
ヴァルナは俺が出したものを舐め取った。
「どこがだよっ…!…だ、だいたいサーフは、さっさと入れるんじゃなかったのか?」
「慣らさず挿入れたらヒートが泣き叫ぶのは想像がつく…その方が良かったか」
「泣かねえよ…てめーの食い千切ってやる」
「減らず口を叩く気力があるなら大丈夫だな」
ヴァルナのが…俺のケツに押し当てられる。ヤツの身体とおんなじで、硬くて冷たくて…けど、ヌルついててやたら生々しい。
「いいか」
「グダグダ言ってないで早く済ませろよ…っ!」
ヴァルナは素直に、無言でブツを突っ込む。
キツい。
慣らされてるのにキツい…。
つーか痛い…!
「い、いてえっ、っは、ちょ、ちょっと待っ…」
「早くしろと言ったのはヒートだろう」
「っは、あっ…だっ…でけぇよ…ぉ…っ」
「うるさい」
死んだカエルみたいに床に倒れ込む俺の腰を持ち上げて、ヴァルナはがつがつ攻める。悪魔化するといつもこうだ。普段だって人の話なんか聞いてねえけどな…。
「ぅ…ア…ッ…熱い…っ」
「お前が冷えてるだけだ」
「ふ…っ、さ、ふっ、んなっ…がっつくなよ…ぉ…!痛ぇ…!」
「口だけは達者だな」
「あぅ…ク…ソ…!怪我人相手に…」
「珍しくお前が冷たいから、暖めてやってるんだ」
俺の背中にヴァルナが覆い被さった。
「あ…待て…ッうぁっ…!」
身体の準備が、なんて言う前に、ヴァルナの腰が打ち付けられて奥まで突き刺さる。
「ィ、アア…!!!!」
俺の体内に、とびきり熱いモノが注ぎ込まれる…。

*****************************

「ほんっとーに何もないんだな?元通りだな?」
俺はシエロの胸倉を掴んで聞いた。
「だいじょぶだってば!もう全然、いつものヒートだから!…にしても、俺あの水飲まなくて良かったー!」
「俺が直々に治療してやったのに、ヒートは疑い深いんだな。ボスの言葉よりシエロの言葉の方が信用できるのか」
サーフは腕組みしている。
「仲間の言葉を信頼してもらうしかあるまい。ここには鏡がないからな。アルジラもそういう類には興味がないように見える」
「ちょ、どういう意味よ、それ!」
乾かしたトライブスーツを持ってきたアルジラが、俺のプロテクターでゲイルの頭を叩いた。
「それは俺のなんだが…」
「あら失礼。さっさと着ちゃってよ。ボロ布一枚纏っただけじゃ、危なっかしくてしょうがないわ」
「どうせ変身するんだから、問題ねえよ」
「そっちの危ないじゃなくて、あっちの危ないの方を言ってるんだけど。ねえサーフ?」
「そうだなあ」
「お前ら、何か隠してねえか…?俺の顔、本当に溶けたりしてないんだな?」
「特に問題はない。サーフの治療とやらが上手くいったのだろう」
「そーそー、ハゲたりもしてないぜ?」
「…そうねえ…うーん…」
ゲイルとシエロが即答したのに、アルジラが複雑な顔をする。
「…あえて言えば、首筋が何箇所か…赤く腫れてるわよね…」
「…くびすっ…?!」
サーフがわざとらしくそっぽを向く。俺は慌ててマントを羽織った。

 

 

 

 

 

 

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